「残念だけど、治療が必要かもね。」2018年桜の花が咲く少し前の頃、私は乳癌という病名を告げられた。
胸の異変に気付いたのはその半年前。子供の受験を控え、新しい仕事の予定も順調に決まり「これから!」という時だった。今まで健康には自信があった私は「まさかね 」と日々の生活の忙しさに追われ病院へなかなか行けずに時が過ぎてしまっていた。
告知を受け、一瞬で目の前が色のない世界に変わってしまい、今ではどうやって帰宅したのかすら思い出せない状態。1週間後に検査結果を聞いた時は、手が震えて書類にサインができなったのを覚えている。まだまだ元気に動き回れる!と思っていた日常が当たり前ではなくなり、子供や家族のこと、この先の事を考えると不安と恐怖で涙が溢れ毎日泣いてばかりいた。そんな時「絵は家でいつでも描けるでしょ。この為に絵と出会ったんじゃない?」と子供に言われたことで、 後に私は救われることになった。
すぐに治療は始まり、薬の副作用で横になることも増えたが、家族、友人の優しさやサポートで、家事や仕事も体調をみながら今までのような日常を過ごし、更に大好きな絵を描くことで治療も乗り切れたのだと思う。
絵を描いている間は不思議と病気のことを忘れられたし、以前の様に元気な感覚になり力が湧いてきて、先生も驚くほどに薬の効果を感じることもできた。
これは、自分が当たり前と思っていた場所(日常)は、実はクジラの様に大きな愛(家族)の上にあり、顔を上げてみれば七色の樹(優しさ)に守ら れ、寄り添ってくれている鳥たち(友人や大切な人達)に囲まれている特別で幸せな世界なんだという想いを込めて描きあげた。
当たり前の日常が実は奇跡の連続で、隣に笑っていられる大事な人がいることがどれ程幸せな事か、病を機に本当に大切な事に気付かされた。今後は再発の心配を抱えながらの日々だが、感謝を忘れずに思い切り生き抜いていこうと思う。
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この各作品はリリー・オンコロジー・オン・キャンバスの作品・エッセイです。