がん病態栄養専門管理栄養士の 「お仕事について」①
掲載日:2021年2月8日 13時00分
がん患者さんご自身にとっても、治療を円滑に進める上でも「栄養」は必要不可欠です。 しかし、治療や副作用等の影響で、思うように食事ができない状況に見舞われることも少なくありません。 患者さんの食事の悩みに寄り添い、栄養サポートを行うのが、がん病態栄養専門管理栄養士の皆さん。 管理栄養士として医療機関での経験はもちろんのこと、がん治療領域において幅広い知識と共に実務を重ね、認定資格を得たスペシャリストです。 今回は前回に引き続き、東京都立駒込病院 栄養科 小倉 ゆかりさんに、がん病態栄養専門管理栄養士としての「お仕事」についてお尋ねし、普段の現場での経験を通してがんサバイバーの皆さんが抱える食の悩みに対するコメントやアドバイスをいただきました。
がん病態栄養専門管理栄養士としてのお仕事についてお尋ねします。
Q:がん病態栄養専門管理栄養士としてお仕事を始めてどのくらいですか?
A:2019年4月より、がん病態栄養専門管理栄養士として活動しています。
Q:がん病態栄養専門管理栄養士を志そう(働きたい)と思ったきっかけは何ですか? どのように資格を取得されましたか?経緯を詳しく教えてください。
A:日常業務の中で、入院患者さんの病態に応じた栄養管理にも携わるようになり、がん専門病院における管理栄養士として自身のスキルアップにつなげたいと考えました。また、緩和ケアチームの一員として活動していた経験から、私は患者さん一人ひとりに応じたきめ細かな栄養管理や栄養食事指導を行える管理栄養士になりたいと思い、「がん病態栄養専門管理栄養士」を受験しようと思いました。同じ資格を持つ職場の先輩の影響も非常に大きかったです。
Q:一日のお仕事の流れをお聞かせください。
「食事について」 がん病態栄養専門管理栄養士のお立場からお答えください。
Q:どういった症状をお持ちの患者さんの食事サポートをしていますか?
A:「食欲不振」「吐き気」「味覚・嗅覚変化」「口内炎」 の悩みを持つ患者さんが多いと感じます。
Q:また、それぞれの症状別に対処されている工夫や心掛けを教えてください。
A:食欲不振や吐き気がある場合、一般的には食事のボリュームが負担となってさらに食べる気が起きなくなってしまうことが多いです。そこで当院では、1回の食事量を少なくし、栄養補助食品をプラスした「ライト食」や単品でアイスクリームや果物、手作りスープなどをお出ししています。
放射線治療による味覚変化がある場合、一般的には「想像した味と違う味がする」「薄味・濃い味の加減が分からない」「何を食べても無味で砂を噛んでいるような感覚」といった訴えをよくお聞きします。当院では、料理の味付けを薄くして調味料を別付けにした「ミラクル食」をお出ししたり、入院食に梅干しなどをお付けしたりしています。
口内炎のある場合、酸味や塩味の強い食品など刺激になる食品は避け、アイスクリームやプリン、卵豆腐などの水分を多く含む、やわらかくて口当たりの良い食品をお付けすることも多いです。 症状は日ごとに変わっていくため、こまめに訪問して患者さんの思いを聞き取りながら食事内容を調整しています。 自宅での食事のとり方について栄養食事指導では、入院中に食べやすかった料理を中心とした調理方法などご本人やご家族にお話ししています。
Q:がん悪液質の調査報告書には 食の悩みが多数寄せられました。 がんサバイバーキッチンにも「食べたいのに食べられない」「何を食べたらよいのか、どのように調理したらよいのかわからない」という患者さんの声をよく耳にします。 こうした患者さんへ、具体的なアドバイスをお願いします。
A:吐き気や倦怠感、膨満感、疼痛、患者さん自身の心理的な問題など、食べられない理由にもよりますが、私は、まずは食べられる時を待って、少量ずつ数回に分けて試してもらったり、食べられなくても、無理に食べようとしなくていいですよ、とお話ししたりすることが多いです。アイスクリームやジュース、プリンなどの冷たくて口当たりの良い食品や、カレーライスや焼きそば、カップラーメンなど味の濃い料理まで、患者さんの嗜好を聞き取り、どのようなものが食べられそうなのかを患者さんやご家族と一緒に考えながら、食事の提案をしていきたいと思っています。