治すのは患者で、サポートするのが医師の役割
血液内科専門医の坂下千瑞子さんは、おだやかに、軽やかに語る。しかし、語られる内容は、とてもハードだ。2004年、呼吸器内科医である夫の米国留学に1歳の娘と同行し、自らも大学の研究員となった。翌2005年、背中が痛んだ。寝違えかと思ったが、しびれも出てきた。 診断を受けたところ、背骨にがんが見つかった。しかも、どんながんなのかよくわからず、執刀医からは根治を目指さない手術を提案された。だが、あれこれ調べたところ、日本に脊椎をまるごと取る手術を考案して根治を目指す医師がいるとわかり、帰国した。 「腫瘍脊椎骨全摘術」という、医師の坂下さんでさえ初めて聞く手術。賭けでもあったが、幼い娘のためにも「生きたい」という気持ちが強かった。手術は成功。手術後に体を戻していく過程で、「治すのは患者で、サポートするのが医師の役割」という思いを抱いたという。これから平穏な日々が訪れる……そんなときに再発した。 続きは動画でご覧ください。【坂下千瑞子】(さかした・ちずこ)=東京医科歯科大学医学部附属病院・血液内科特任助教(血液内科の専門医)。1966年、大分県生まれ。1992年、大分医科大学医学部卒業後、東京医科歯科大学第一内科に入局。2002年、東京医科歯科大学大学院医学研究科修了。2004年、米国ペンシルバニア大学血液腫瘍講座の研究員となる。滞在中の2005年、背骨に腫瘍が見つかる。帰国して手術を受けるが、2006年と2007年に再発。2014年には大腸がんも見つかる。困難を乗り越えて「リレー・フォー・ライフ」の活動にも力を入れている。