二度のがんを乗り越えて見えた「どう生きたいか」
上野直人さんは、米国きってのがんの医療機関「テキサス大学MDアンダーソンがんセンター」の腫瘍内科医である。同時に、10年前に左太ももの肉腫(悪性線維性組織球腫)になり、4年ほど前にMDS(骨髄異形成症候群)の診断を受けた。全く違う2種類のがんを経験したサバイバーでもある。 専門医である上野さんは、がんと聞いて頭が真っ白になることはなかった。最初になった肉腫は、切除すれば完治できる可能性が高かった。しかし、MDSのほうは、考えれば考えるほど、うつ状態になった。MDSは血液がんの一種。正常な血液細胞が減少し、白血病の前段階とも言われる。しかも上野さんの場合、治療しても完治できる状況ではなかった。だんだん貧血がひどくなり、歩いても息切れする。常に倦怠感を感じる状態になった。 そんな中で考えたのは、自分が送りたい人生は何か、どう生きたいか、ということだ。「医者として活発に活動しながら楽しく生きたい」。そんな価値観に改めて気づく。骨髄移植を受ければ完治の可能性がある。しかし、30%ぐらいの確率で1年で死亡する可能性もある。上野さんは周囲の医師たちに意見を聞いた。答えはバラバラ。最終的に下した決断とは……。 垣添との対談では、専門医ゆえの苦悩を経てたどりついた患者にとって大切なことについて、語りつくしました。 どうぞこちらをご覧ください。【上野直人(うえの・なおと)】1964年、京都府生まれ。和歌山県立医科大学卒。90年渡米し、96年にテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの腫瘍内科医となる。2009年から教授。患者力のアップを目指す「がんアドボケートセミナー」(一般社団法人オンコロジー教育推進プロジェクトと日本対がん協会の共催)や、リレー・フォー・ライフ・ジャパンへの寄付金をもとに若手医師の米国留学を支援する「RFLマイ・オンコロジー・ドリーム奨励賞」などにも力を入れている。著書に『一流患者と三流患者』(朝日新聞出版)など。