2019年7月7日開催 がんアドボケートセミナー 開催レポート
適切な治療を受けるために必要な姿勢や、治療の継続に向けた支援活動(がんアドボケート活動)について学ぶ「がんアドボケートセミナー(ドリームキャッチャー養成講座9期)」が、7月7日、東京都中央区の朝日新聞社で開催された。がん医療に対する夢を語り合い、共有し、より良いがん医療にしようという「マイ・オンコロジー・ドリーム」活動の一環で、日本対がん協会のがんサバイバー・クラブ運営委員会とオンコロジー教育推進プロジェクトが共催。各地のがんサバイバーや患者家族、医療関係者ら30人が参加した。
セミナーでは、最初に米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの上野直人教授が、がん医療に熱意を持ってかかわる人材や、患者中心のがん医療を推進する人材を育成するマイ・オンコロジー・ドリームの使命やビジョンについて概説。患者が何を求めているのかを積極的に発信することや、がん医療に対する自分の夢を語って分かち合うことの大切さを訴えた。 そして夢の実現に向けて「活動するには戦略が必要」として、まず成功像を描き、そのユニークな点は何かを見すえ、まわりはどう感じるのか、大局的な見地で考えて進めていくプロセスの重要性を説明した。
その後、参加者らは4グループに分かれて「がんになっても自分らしく生きられる世の中にしたい」などと、自分たちのがん医療のマイ・ドリームを発表し合った。
さらに各グループのファシリテーター役となった国立がん研究センター東病院乳腺外科医員の古川孝広氏が「科学的根拠に基づく医療(EBM)とメディカルリテラシー(医療情報)」をテーマに講演した。古川先生は、インターネット情報が多くなる中で正しい医療情報を入手するために、情報の内容を適切に理解するリテラシーを高めていくことが不可欠と解説。情報を主治医や家族と共有し、判断に迷ったときに相談することをアドバイスした。
分田貴子先生
続いて、「がんの治療中でも自分らしい生活をかなえる」活動の事例紹介として、東京大学医学部付属病院乳腺外科・がん相談支援センター副センター長の分田貴子氏が、東大病院で行っている「外見ケア」に関するイベントなどの取り組みを解説した。薬の影響による皮膚の変色、爪の色や形が変わってしまうことなどへの悩みに対する「カバーメイク・外見ケア外来」での診察だけでなく、入院患者との女子会のような流れで外見ケアに必要な製品の展示相談会を始めたのが発展して外見ケアのイベントを院内で開催するようになった経緯を紹介。外見ケア外来の患者と仲がよく、主治医として患者のネットワークにのせてもらい、楽しみながら院内でイベントや患者サロンを継続的できていることを説明した。
がんカフェ運営など、具体的プランを提示し合うこうした講演を受け、その後のセッションでは、参加者は、患者力を高めるためのアドボケート活動として「私たちが取り組むべきこと・アイデアの創出と立案」をテーマに、3時間にわたってグループディスカッションを行った。
虎の門病院 三浦裕司先生(左)・東北大学病院 宮内栄作先生(中央)・東北大学病院 森川直人先生(右)各グループのファシリテーターを務めた先生は、リレー・フォー・ライフ・ジャパンで全国から預かった寄付金でテキサス大学MDアンダーソンがんセンターやシカゴ大学医学部で学んだ経験を持つ。
参加者は患者家族・支援者の立場で具体的な活動につながるアドボケート活動や医療者が当事者に期待するアドボケート活動を自身の経験をもとに意見をシートに書き出しながら議論を行った。最後のまとめ発表では、各グループがそれぞれのプランなどを提示し合った。
あるグループからは、ドリームラウンジという店名でのがんカフェを設立し、がんサバイバーや支援者で運営して全国チェーン化を目指すプランが提案された。カフェでがんに関するイベントやセミナーも開き、がんサバイバーの雇用創出につなげることなども示された。
また、別のグループでは個々の参加者らが取り組むべき案を発表。その一人は、サバイバーとしてホテルに勤務している。実際にがん患者支援宿泊プランを始め、さらに、がんになっても早期治療を適切に受けることで普通に勤務できることなどを社内で仲間に啓もうしようと取り組んでいることなどを語った。
全体について講評した上野教授は、新たにカフェを立ち上げるのではなく、すでにある全国チェーンのカフェの中にがんカフェを作ることを働きかけていくなど、発想を変え、同じような取り組みをしているものはないか探し、あればその人たちを助けていくことの大切さを語っていた。