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第11回「がんの薬ができるまで~映画「希望のちから」をみんなで観よう!~」 サバイバーカフェを開催しました

掲載日:2019年11月21日 10時00分

 国際的な乳がんの啓発月間である10月の最終日、日本対がん協会の会議室で、第11回サバイバーカフェを開催しました。乳がん治療薬「ハーセプチン」の誕生を描いた映画「希望のちから」を、患者さん、ご家族、支援者などさまざまな立場の方と一緒に鑑賞しました。ポップコーンとレモネードを用意しリラックスムードを演出。当日は、21名の方にご参加いただきました。

実話を基にしたストーリー

 映画は、乳がんの治療薬「ハーセプチン(一般名トラスツズマブ)」が、マウスの臨床試験から、人を対象とした治験に進み、第1相試験、第2相試験、第3相試験を経て、治療薬として承認されるまでの苦難や苦労を描いたものです。薬ができるまでの段階を知っている人は多くないと思います。がん患者さん、支援者の皆でこの映画を鑑賞することで、医療情報の知識を高め、がんに関するニュース記事を読み解く際の基礎知識になればと考えました。  「ハーセプチン」は、分子標的薬です。従来の抗がん剤とは異なり、がん細胞特有の性質をターゲットに作用するため、正常細胞へのダメージは比較的少なくなります。抗がん剤の副作用である吐き気や脱毛などはありません。主人公(デニー・スレイモン医師)は「乳がん患者を、手術や放射線、抗がん剤以外の治療で救いたい」と、熱い想いで、資金難や製薬会社の理事との攻防、治験の被験者が命を落とすなど、さまざまな課題や困難に立ち向かいます。

希望のちから

 デニーは乳がんの治療にすべてを捧げる医師。彼は、乳がん患者とその家族のためにいろいろなものを犠牲にしていた。ある時は家族との団欒、ある時は治療薬開発の資金を得るために奔走し、多くの時間を乳がん治療の研究に時間を費やしていた。それはすべて患者の笑顔のためであった。   2008年製作/91分/アメリカ 原題:Living Proof 映画.comより https://eiga.com/movie/54829/   
   映画には、さまざまな乳がん患者さんとその家族が登場します。2人の小さなお子さんを持つお母さんや、自分のブティックをオープンさせたばかりの若い独身女性など。鑑賞会参加者は、自分と重ねて思わず涙ぐむシーンも。苦節8年、乳がんの治療薬として世に出た「ハーセプチン」。多くの乳がん患者だけでなく、今では適応範囲を広げ、胃がんにも使用されています。  

製薬会社、医師、患者、家族の連携があってこそ

 鑑賞後、日本対がん協会のがん検診チームの小西宏より、日本とアメリカの治験環境の違いを補足説明させていただきました。  日本とアメリカで薬の承認時期が異なる「ドラッグラグ」はほとんどなくなりました。しかし、アメリカの薬の開発にかける研究費用は巨額です。そのうち、アメリカ政府からの支援は15~20%。他は民間からの寄付で支えられています。日本政府の薬の開発に対する支援は、日本の研究費全体の10%前後です。欧州主要国に比べても低い状況で、日本の国力から考えると、まだまだ、薬の開発支援の規模は小さいと言っても過言ではありません。また、映画の中で製薬会社が、なかなか治験にGOを出さないシーンが多くありましたが、市場規模との関係もあり、巨費のかかる治験を進めていくのに慎重です。  一方で、企業は薬の特許期間(15年)の関係から、開発期間を短くし、「特許に守られて独占販売する期間」を相対的に長くしようと考えます。従来、比較的、治験に長くかかってきた日本より、それよりも短いアメリカでの開発を優先させる傾向がありました。  また、映画では、第2相、第3相試験に進む際、薬が効いている人でも値が低いと治療から外されていましたが、現在は、薬が効いていれば、被験者でなくなっても治療を継続して受けられます。  「今もさまざまながんの薬が研究されています。もちろん、「日の目を見る」ものはそれほど多くはありませんし、「画期的新薬」は非常に限られています。ただ、「希望」があるのも事実です。映画に描かれていましたが、その希望は、研究者、製薬会社、医師、患者さん・ご家族の協力・連携があってこそ、のものだと思います。  製薬会社主導から医師主導へ、いずれ患者主導の研究も増えてくることも考えられます。こうした開発状況に関する情報は、適切に発信することも重要です。 写真の左手が小西宏。右手が司会進行役の濱島明美。  

映画を観た感想が続々

 以下、皆さんからいただいた感想をご紹介させていただきます。 ・1つの薬が承認されるまでの道は長く厳しいことがわかった。   ・諦めなければ、道はひらけることがある。   ・治験について考える機会となった。   ・乳がん治療を大きく変えた薬と聞いていて、自分も治療を受けたので、多くの方の苦労と協力を知ることができて、感謝の気持ちでいっぱいです。   ・私は標準治療のないリンパ腫(MCL)で、JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)の臨床試験で、治療を受け寛解しました。当時(4年前)はなかった薬が今は承認されていたり、日進月歩であることを実感しています。再発した時の薬もすでに承認され、今は安心です。そのために沢山のお医者様、被験者の方がおられる事に感謝します。   ・私はがん治療でハーセプチン投与の治療を受けました。お医者様だけでなく、患者さんやそのまわりの人たちのお陰で薬が完成し、そして今日の私があるのだと思い、関わった方々に感謝の気持ちでいっぱいになりました。   ・薬の開発については全く知らなかったので、目が見開かされた時間でした。   ・闘病についてはいろんな映画がありますが、今回は薬の開発についてドクターの取り組みを見られて良かったです。   ・映画に泣きました。実態と脚色を上手く結合していたのかもしれません。小西さんの説明もとても分かりやすかった。   ・研究に関わっている医療者たちの情熱や葛藤もあり、医療者の家族も影響している背景を改めて知ることができ、とても心に響きました。   ・みんなで観るということに何か意味があったように感じます。良かったです。   ・開発者や患者(被験者)さんのリアリティを多少なりとも感じることができた。   たくさんの感想をありがとうございました。 第11回サバイバーカフェ記念写真をパチリ!
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