早いもので、今年も残すところわずかとなりました。
12月になると街はクリスマスのイルミネーションで彩られ、女性のメイクやファッションもどことなく華やかになります。しかし、実はこの季節、がんと向き合う人にはときにつらい時期でもあります。
「いまの私には無縁のことです……。私は色のない世界にいるようです」とため息交じりに話す相談者がいました。
がんになるまでは、メイクもファッションも大好きで、メイクは季節ごとに変えて楽しんできたといいます。でもいまは、抗がん剤の副作用で髪は脱毛し、肌は黒ずみ、メイクはしなくなったといいます。
鏡やショーウィンドウに映る自分を見るのが嫌になり、外出や人と会うことを避けて家に閉じこもっているということでした。
別の相談者も、抗がん剤の副作用で眉毛やまつ毛が抜けて顔の印象が変わり、人の目が怖いといいます。「大きなマスクで顔を覆い、態度までこそこそとするようになった自分が嫌いになりそうです」と必死に涙をこらえている様子が電話越しに伝わってきました。
このように、外見の変化は患者さんの心に大きな影響を与え、日常生活や社会生活、人間関係にも支障が出てしまうことがあるのです。
そんな時、患者さんの力になってくれるのが、外見の変化をケアするメイクです。 これは、がんになる前の自分に戻すためではなく、がんになっても自分らしく生きられるようにしていくためのメイクです。
外見の変化を上手にケアすることで、つらさが和らいだり、前向きな力が湧いてきたり、自信を取り戻すことに繋がっていくことだってあります。 社会へ出ていくことをためらう自分の背中を押してくれる、そんな力も秘めているのです。
いまは、がん患者さん向けのメイクのセミナーが少しずつ増えてきました。
もしも、外見の変化で自信がなくなったり、一歩を踏み出す勇気が持てなくなっていたりしたら、メイクの力を借りてみましょう。
きっと、表情に彩りが生まれるだけでなく、心にも彩りが生まれ、生きる希望へとつながるはずです。
※肌の状態によってはメイクを控えた方がいい場合があります。事前に担当医や看護師に相談してください。