アメリカでセカンドオピニオンを受ける
米国テキサス州のヒューストンと言えば、日本人が思い浮かべるのは、石油でしょうか。 実はもう一つの顔は、医療です。ヒューストンには、病院や研究機関などが集まった世界最大級の医療センター「テキサス医療センター」があるのです。がん医療で有名なテキサス大学MDアンダーソンがんセンター(以下MDアンダーソン)もここにあります。
和歌山県で生まれた私は、子どものころから医療に関心を持ち、薬剤師の資格を取りました。1991年に結婚を機に渡米。英語の習得を目的に病院でボランティアをしているうちに、アメリカの医療システムが気になり始めます。
そして、MDアンダーソンで、リサーチナースやデータマネージャーを務めました。その間に、海外からMDアンダーソンにセカンドオピニオンを受けに来て、その後、自分の国へ戻って治療を受けている患者さんが多いことに気付きました。MDアンダーソンの医師は、海外の患者さんのフォローも丁寧に行っていたのです。
MDアンダーソンがんセンター。リレー・フォー・ライフ・ジャパンの寄付金で、日本の若手医師も留学しているテキサス州公認の会社をつくる
日本の患者さんもこのシステムを利用できるようなサポート態勢を作りたい。治療の選択肢を広げる機会を増やしたい。そう考えて、2002年6月、テキサス州公認の会社として「メディエゾン」を設立しました。
耳慣れない名前の由来は、Medical(医療)とLiaison(連絡窓口)の造語。日米の「医療の架け橋」になる質の高いサポートを目指しています。
それから18年。サポート対象となる病院も増えて、これまでに500人近い患者さんに、ご利用いただいています(ご希望の方はこちらまで)。
がんサバイバー・クラブのサイトでは、アメリカで医療現場に触れてきた経験をもとに、ヒューストンにいるからこそ見える、そして日本のみなさんに知っていただきたいトピックスやメッセージなどを、エッセイ風に綴っていきたいと思います。 折に触れての掲載になりそうですが、気楽にお読みいただき、ご自身の治療や生活の参考にしていただければうれしいです。
MDアンダーソン主催のBootWalk。がん撲滅を願って歩く。約6000人が参加し、研究費用に2億円以上の寄付が集まった(2018年)ベストドクターよりもベストホスピタル
アメリカでは毎年、「U.S. News & World Report」という伝統ある雑誌が、全米約5000の病院から疾病ごとにベストホスピタルを選びます。 MDアンダーソンは15年以上にわたり、がん部門で1位か2位に選ばれています。
一方で、「Best Doctors」という、1989年にハーバード大学医学部の医師2人が創業した会社が、簡単に言えば世界の名医のデータベースを作っています。MDアンダーソンには、ここに選ばれている医師もたくさんいます。
しかし、MDアンダーソンは、「うちにはベストドクターがたくさんいますよ」とは宣伝しません。代わりに、「今年もベストホスピタルの1位に選ばれました」と自慢します(元記事はこちら)。
なぜでしょう? 良い医療は、ベストドクターによってではなく、病院で働く全ての人が一丸となって患者さんのことを考え、行動することで提供できる。そう考えているからです。
MDアンダーソンでは、新しく就職した人に行うオリエンテーションとして、病院のビジョンや価値観をしっかり自分のものとして行動するための取り組みがあります。これは、ボランティアをする際にも同じです。
良い医療は、医師だけでは成立しない。同時に、医師が医師として力を発揮する時間を確保するためには、チームの多くの助けが必要であることを示しています。
病院内でも、ベストホスピタル1位に選ばれたことを大々的に伝える患者の権利、10の言葉
MDアンダーソンには、いたるところに、「患者さんが期待できる権利」というボードがあります。そこには、10の言葉があります。
1.Care(ケア) 2.Information(情報) 3.Participation(参加) 4.Consideration(熟慮) 5.Prompt Response(迅速な返答) 6.Privacy and Confidentiality(プライバシーと秘密保持) 7.Commitment(約束) 8.Assessment and Management(評価と管理) 9.Respect(尊厳) 10.To Be Heard(意見を聞く)
よく読むと、患者側が心がけたいことにもつながりますね。個々の項目の詳細については、おいおい、書いていきます。 (写真はすべて、上野美和撮影)