こんにちは。クリコです。
「人生100年時代」という言葉をよく見聞きするようになりました。世界的に平均寿命は延び続け、100年の人生を生きることをリアルに考える時代が来るようです。
これからは、ただ長生きすればいいということではなく、できる限り体の健康を保ち、生きがいを持って心も健やかに、そして様々な形で社会参加することが求められるということでしょうか。
あと数年で前期高齢者となる私は、100歳までをどう過ごすべきなのか想像できませんが、満92歳の母の来し方を振り返ると、今につながるヒントがたくさんあるような気がしています。 そんな母は食欲も旺盛。「毎日、ごはんが美味しくて美味しくて〜」と顔をほころばせる姿に、何はともあれ、食べる力は生きる力なのだと納得してしまいます。
昨年、母が自宅で転倒した際、上の前歯二本を折り入れ歯になってしまいましたが、ほかの歯は全て自前です。幸い、食事にはほとんど影響がなく、以前と変わらず食事を楽しんでいます。 母の健康寿命を支えるものの一つが、なんでも食べられる丈夫で健康な歯であることは間違いありません。
今回は、食べる力に合った食事作りと誤嚥しやすい食品についてお話をします。
噛む・飲み込む力に合った食事作り
噛む力が衰えたからといって、柔らかいものばかり食べていると、噛む力はますます低下します。反対に、噛む力が弱いのに、硬いものや大きいものを食べると、誤嚥や窒息を招く危険があります。 介護食作りでは、食べる人の噛む・飲み込む力の程度を知り、その力に合った食事の形態を選ぶことがとても大切です。
私が介護食を作り始めた当初、夫の噛む・飲み込む力の程度と夫が食べられる食品の形状のイメージが一致せず困りました。そこで作ったのが、下の表です。 食べる人の力に合わせた食べやすい食品の形状と必要な調理方法を確認することができます。
監修:日本大学歯学部 摂食機能療法学講座 准教授 阿部仁子 |
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この表の見方をご説明しましょう。 まず、食べる人の食事の様子を観察し、噛む・飲み込む力の程度が A〜Fのどれに当てはまるかを見つけます。 次に、A〜Fの分類ごとに矢印へ進み、「食べやすい食品の形状と大きさ」を確かめます。人参、ほうれん草、かぼちゃを使って、その形状と大きさを具体的に表しています。最後に、「調理方法と注意点」を確認します。
例えば、私の夫の場合、噛む・飲み込む力はCに当てはまりました。矢印に沿って見ると「食べやすい食品の形状と大きさ」は 「舌と上顎で潰せる形状、粒の大きさは5〜7mm」とわかります。さらに、「調理方法と注意点」を見ると「普通食より柔らかく加熱し、小さく刻んで、とろみをつける」となります。
食べる人の口の中の状態はその日の体調などによって変化しますが、この表でおおよその目安がわかれば、そこを基点に食品の形状や調理方法を調整することができます。ぜひ、ご活用いただきたいと思います。
誤嚥を招きやすい食べ物の特徴
食品の形状や物性によって、噛みやすさや飲み込みやすさには違いがあります。誤嚥につながりやすい食品の特徴について、詳しく解説していきます。
- 大きさや、硬さがふぞろいのもの 包丁などで細かく刻む場合、刻んだ一つひとつの粒の大きさがふぞろいだったり、硬さが違う食材が含まれていると、噛むのが難しくなり、飲み込みやすいひと塊りにまとめることができません。同じ大きさ、同じ硬さにそろえるようにします。
- バラバラになる食べ物 おから、ひき肉、かまぼこ、こんにゃく、レンコン、ピーナッツ、寒天といった食材は、細かく刻むと、口の中でバラバラになりやすく、ぽろぽろと喉に落ちて誤嚥を招きやすくなります。こうした食材は、とろみをつけたり、ペースト状にするなど、まとまるようにすると食べやすくなります。
- サラサラした液体 水やお茶、ジュース、汁ものなどの液体は、噛む必要がないので飲み込みやすそうに思えますが、実は細心の注意が必要です。サラサラしているため、速いスピードで喉を滑り落ち、誤嚥の原因となりやすいのです。液体はとろみをつけて、ゆっくり飲み込めるようにします。
- パサパサしている食品 パン、カステラなどスポンジ状でパサパサしている食品は水分が少ないため、口の中でバラバラになりやすく、まとまりにくいという特徴があります。唾液と混ざるとベタついた団子状になり、飲み込めず口の中に残りやすくなります。量が多いと喉を詰まらせる危険もあるため、なるべく避けます。
- ペタペタ張り付く食材 キュウリの薄切り、ワカメ、海苔、ウエハース、最中の皮、餅などは喉に張り付きやすく、飲み込みにくくなります。誤嚥の原因にもなるため、なるべく避けます。
- 酸味の強い食品 酸っぱいもの、酸味の強いものは、ムセを誘発しやすいため、出し汁などで酸味を薄めるとよいでしょう。
いかがでしたか。思いも寄らない食材が誤嚥を招く原因になるんですね。
介護をしていた当時、買い物をする時には、「バラスッパサラパサキルペタ…バラスッパサラパサキルペタ…」と呪文のように唱えながら(もちろん、頭の中だけで)、買い物をしたものです。 これは、誤嚥しやすい食材の特徴の頭文字「バラ、酸っぱ、サラ、パサ、切る、ペタ」です。 なんだかおまじないみたいですね。
皆さんも食材を選ぶ時に、誤嚥を招きやすい食べ物の特徴を思い出してみてくださいね。
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周年栽培が可能になったこともあり、季節感を感じることが少なくなってきましたが、春先ともなれば、フキノトウ、セリ、筍、菜の花、春キャベツなどの旬の野菜が店頭に並びます。 春野菜で作るポタージュ、すり流し、ムース、フラン、リゾットなどは、柔らかな甘みと香りを堪能できるのでオススメです。
今回は「菜の花のすり流し」をご紹介します。菜の花の独特のほろ苦さと西京味噌の優しい甘みがよく合う汁物です。
じゃがいものピュレ
【材料 作りやすい分量】
材料名 | 分量 | |
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1 | メークイン | 200g |
2 | 水 | 大さじ1~2 |
3 | 塩 | ひとつまみ |
【作り方】
じゃがいもは皮をむき、縦横半分で4等分に切る。水に2分ほどさらし、表面のデンプンをさっと洗う。 耐熱容器に入れ、塩ひとつまみを加えて、600wの電子レンジで約5分加熱する。 熱いうちに、ポテトマッシャーなどで潰す。 まとめて作り、小分け冷凍しておくと便利。
菜の花のすり流し
【材料 2人分】
材料名 | 分量 | |
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1 | 菜の花(下茹でしたもの) | 60g |
2 | 新玉ねぎ | 10g |
3 | じゃがいものピュレ | 30g |
4 | 濃いめの出し汁 | 1カップ |
5 | 西京味噌 | 大さじ1と1/2 |
6 | 塩 | 適宜 |
7 | 菜の花の穂先(下茹でしたもの) | 適量 |
8 | 柚子の皮の細切り | 少々 |
【作り方】
じゃがいものピュレを準備する。冷凍保存してある場合は、解凍する。 新玉ねぎを1.5cm角に切る。 菜の花は、茎とつぼみ側に切り分ける。熱湯に塩を加え、茎を入れる。30秒ほど経って少し柔らかくなったところでつぼみ側を入れ、さらに30秒ほど茹でる。冷水に取り、軽く水気を絞る。 耐熱容器に1と2と出し汁を入れ、600wの電子レンジで4分加熱する。 3、4、西京味噌を合わせてミキサーにかけ、塩で調味する。 温め直して、器に注ぎ、茹でた穂先と柚子皮を添える。 *冷たく冷やしても美味しい。