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村本 高史の「がんを越え、”働く”を見つめる」
第10回 両立支援で大事なこと④~自社の方針明示

掲載日:2022年8月9日 15時31分

 企業等の組織において、トップの存在感は極めて大きなものがあります。カリスマ型、民主型等、リーダーシップのスタイルは様々でも、組織の方向性や方針を明示する役割は不可欠です。  今回は、治療と仕事の両立支援の上でも重要なこれらのことを考えていきましょう。

自社の方針明示に向けて

 厚生労働省が策定した「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」には、「両立支援を行うための環境整備(実施前の準備事項)」の最初の項目として、「事業者による基本方針等の表明と労働者への周知」が掲げられています。

 トップが両立支援の必要性や意義を理解し、自ら発信を行うことで、治療と仕事の両立をしやすい風土づくりにつながれば、実際に治療と仕事を両立させようとする社員にとって、大変心強いことになります。特に中小企業であれば尚更です。

 とはいえ、不透明で厳しい経営環境の中、トップは非常に多忙です。他の優先事項に力を取られ、必ずしも両立支援に関心が向いていない場合もあるかもしれません。

 その場合も人事部門等の担当者は諦めることなく、何とか粘り強く働きかけてほしいものです。トップの理解を取り付けられれば、両立支援の基本方針を明示することができます。あるいは、自社の特性や強みに合った施策を策定しながら、方針を同時並行で練り上げていくこともありでしょう。自社の方針づくりの進め方も、企業の実情や持ち味によって様々だと思います。

「がんアライ宣言」の活用法

 私が勤務するサッポロビールは、トップ自らが率先して治療と仕事の両立支援を進めてきたわけではありません。2017年の「がんなどの治療と仕事の両立支援ガイドブック」の制作を取組みの手始めとして、自社でできることを一つひとつ積み重ねてきました。

 その中で大きかったのは、2018年に「がんアライ宣言」を策定したことです。がんを治療しながら働く人を応援する団体が対象の民間表彰「がんアライアワード」が創設され、応募条件だった「がんアライ宣言」を策定したいと当時の社長に申し出たところ、「いいよいいよ、ぜひやろうじゃないか」と快諾してくれました。

「サッポロビールは、がんを経験した社員の思いを大切にし、働きやすい制度と対話により、会社の強さにつなげます」(※)。この時に策定した「がんアライ宣言」は、自社の両立支援の取組みに太い軸を通したように感じています。

 先日、「がんアライアワード2022」の募集が始まりました。「まずは『がんに罹患した場合も、従業員に寄り添う姿勢がある』と表明いただくことが大切だと考えています」とのことで、応募は「がんアライ宣言」のみの提出でも構わないことになっています。

 社員一人ひとりに寄り添う姿勢を示すべく、まずは両立支援の基本方針を示すこと。社内の取組みを進めるきっかけとして、この機会にぜひ宣言、応募してみてはいかがでしょうか。


 ※厚生労働省「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」

 https://chiryoutoshigoto.mhlw.go.jp/dl/download/guideline.pdf

 ※がんアライ部「がんアライアワード2022」募集ページ

 https://www.gan-ally-bu.com/declare

 ※サッポロビールのがんアライ宣言

 現在はがん経験者の家族・遺族である社員等も含める形で、「がんを経験した社員」を「がんに影響を受ける社員」に改定しています。

村本高史(むらもと・たかし) サッポロビール株式会社 人事部 プランニング・ディレクター 1964年東京都生まれ。1987年サッポロビール入社。2009年に頸部食道がんを発症し、放射線治療で寛解。11年、人事総務部長在任時に再発し、手術で喉頭を全摘。その後、食道発声法を習得。14年秋より専門職として社内コミュニケーション強化に取組む一方、がん経験者の社内コミュニティ「Can Stars」の立上げ等、治療と仕事の両立支援策を推進。現在はNPO法人日本がんサバイバーシップネットワークの副代表理事や厚生労働省「がん診療連携拠点病院等の指定検討会」構成員も務めている。

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