こんにちは。クリコです。
名優マルチェロ・マストロヤンニとソフィア・ローレンといえば、イタリア映画界のゴールデンコンビ。男女の悲喜劇を描いた共演作は、日本のテレビでも繰り返し放映されてきました。 「昨日・今日・明日」(1963年)、「あゝ結婚」(1964年)は、コメディタッチなストーリーとイタリア語の軽妙さに、子供の私でも楽しむことができました。
代表作「ひまわり/GIRASOLI(1970年)は、第二次世界大戦下に引き裂かれた男女の悲劇を描いた、映画史に残る不朽の名作です。 極寒のロシア戦線から戻らない夫を探しに、異国の地に降り立った妻が目にしたのは、乾いた大地に果てしなく広がるひまわり畑でした。その下には何千万という戦没者が埋葬されていると聞かされても、夫の生存を疑わず探し続ける妻が見たものは、新しい家族と幸せそうに暮らす夫の姿でした。 後戻りできないふたりの悲しい再会の場面に、名匠ヘンリー・マンシーニの切ないメロディーが流れ、一層悲しみを誘います。 どの場面も忘れがたく、円熟味を増した名優の息の合った演技は、観るたびに新鮮な感動をもたらしてくれます。
明と暗の食卓の風景
映画の序盤、新婚の夫が張り切ってオムレツを作る場面は、この映画の数少ない楽しいシーンのひとつです。 卵24個で作る特大のオムレツにフォカッチャと赤ワイン。これだけで十分満たされるほど、ふたりは若く無邪気で幸せでした。 結局食べきれずに、お腹が苦しくて笑い合うふたり。「一生、卵とは縁を切る」と言った矢先に、夫の母がカゴいっぱいの卵の贈り物を置いて帰るところは笑いを誘います。
この場面とは対照的に、戦地から戻らない夫を案じ、薄暗い食卓で具のないスープをすする妻の虚ろな表情。オムレツの場面とくっきりと明暗が分かれる食事のシーンが印象的です。 オムレツの黄色は幸福感と豊かさの象徴に、ひまわりの黄色は悲しみと別離の象徴となっています。希望を象徴するはずのひまわりが、これ以上ないほど悲しく映ります。
思い出の味「ポルチーニのステーキ」
オムレツで思い出深いのが、数十年前に北イタリアの街パルマのメルカート(市場)で買って食べたフリッタータです。 フリッタータはイタリア版オムレツで野菜やベーコンなどいろいろな具が入っていますが、ここで食べたのは、玉ねぎとポルチーニ茸入りのシンプルなものでした。玉ねぎの甘みとポルチーニの香りが口中に広がって、至福の味でした。 季節はキノコが旬の秋。その足で、ポルチーニ茸を味わうためにボローニャへ。目当てのレストランでポルチーニ茸のステーキを注文すると、運ばれてきたのは手のひら大で厚みのある巨大な茸。乾燥させたポルチーニしか食べたことがなかったので、まずはその大きさに驚きました。 塩、黒胡椒、オリーブ油、イタリアンパセリ、レモンをかけただけのシンプルな料理ながら、弾力のある食感とフレッシュな香り、口に広がるジュースが、えも言われぬ美味しさ。茸なのに牛ステーキを食べたくらいの満足感があって、いつかまた食べてみたい思い出の味です。
イタリア映画と旅の思い出にあやかって、今回はキノコのピュレとジャガイモのピュレを使ったスフレオムレツをご紹介します。ふわふわのスフレ状に焼き上げるコツなど、是非ご参考になさってください。
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きのこ入りスフレオムレツ
【材料 2~3人分】
材料名 | 分量 | 1 | 【卵液】 |
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卵白 | 2個分 | |
卵黄 | 2個分 | |
おろしニンニク | 少々 | |
マヨネーズ | 小さじ2強 | |
ヨーグルト | 小さじ2 | |
生クリーム | 小さじ2 | |
削ったパルメザンチーズ | 10g | |
塩 | 少々 | |
胡椒 | 適量 | 2 | 【具】 |
ミックスきのこのピュレ | 50g *作り方は第5回「ミックスきのこのピュレ」を参照 | |
じゃがいものピュレ | 50g *作り方は第6回「じゃがいものピュレ」を参照 | |
無塩バター | 5g | |
牛乳 | 5g | |
塩 | ひとつまみ | 3 | 【ソース】 |
クリームチーズ | 小さじ2強 *常温に戻しておく。 | |
生クリーム | 小さじ4 | |
レモン汁 | 小さじ1 | |
ハーブのみじん切り(タイム、バジル、パセリ、ディルなど) | 適量 | |
塩 | 少々 | 4 | 無塩バター | 10g | 5 | チャービル | 適宜 |
【作り方】
具を作る。じゃがいものピュレ、無塩バター、牛乳、塩を鍋に入れ弱火にかける。全体にぽってりとするまで加熱したら、ミックスきのこのピュレを加え余分な水分を飛ばす。 クリームチーズはあらかじめ室温に戻しておき、ほかの材料と混ぜソースを作る。 卵液を作る。卵白をしっかり泡立てる。そのほかの材料をよく混ぜ、卵白を3回に分けて加え切るように混ぜる。 フライパンを弱火にかけ無塩バターを溶かす。3を流し入れ蓋をして弱火でゆっくり火を通す。*卵液には触らず、じっくり火を通すことでふんわりとした食感に仕上がります。 中心が半熟状態になったら、真ん中に1を置き生地を半分に折る。 皿に盛り2をかけ、チャービルを添える。