こんにちは。クリコです。
中学1年生の正月の朝、父に連れ出され、電車を乗り継いで向かった先は明治神宮だった。大勢の参拝客でおしくらまんじゅう状態になりながら、見上げると木々の間から青い空が少し見えた。牛歩のように進み、本殿に着くまでに気が遠くなるほど時間がかかったことを覚えている。
苦労してやっと参拝したのに、何を祈ったのかは全く記憶にない。破魔矢を握りしめ家の最寄り駅に着くと、父はオープンしたばかりのスーパーマーケット「ヨーカ堂」に寄った。1階が食品、2階は洋品、3、4階が生活用品売り場で、駅前に古くからあるスーパーに比べて敷地面積も格段に広く洗練されて見えた。
でも、私が魅了されたのは建物のてっぺんに大きくそびえる看板だった。翼を広げたハトの輪郭を白抜きにしたシンプルなデザインは斬新で、今にも飛び立ちそうな躍動感に心が踊った。あまりに好きすぎて工作や家庭科の課題のモチーフにしていたくらいだ。
父と立ち寄ったこの日は、店員が景気のいい掛け声をかけながら福袋を売っていた。あっさり素通りする父に少しがっかりしながらも真新しい店内を楽しく散策した。洋品フロアに戻った父に「好きなものを買いなさい」と言われた私は、一緒に買い物すること自体ほとんどないことだったので少し戸惑った。迷った挙句に紺色のVネックのカーディガンに決めた。襟ぐりから前立てにかけて、えんじ色と白の細いラインが入っているのが気に入ったのだが、父は「もっといいのを買えばいいのに」と不満そうだった。娘のために奮発したかったのかもしれないが、そのカーディガンは私にとても似合っていたと思う。
そして、帰りがけに父は福袋を買った。見栄っ張りの父らしく、一番高くて大きいものを買った。福袋の中身の詳細は覚えていないが、女性もののマフラーと手袋があったのをかすかに記憶している。 福袋の中身にがっかりする私と姉、初めから期待していない現実的な母、家族の反応にへへへと照れ笑いする父。少し間抜けで平和な感じが、まるで漫画ちびまる子ちゃんの家族のようだ。
昨年の秋にヨーカ堂(現イトーヨーカドー)が閉店し、駅の反対側の再開発が急ピッチで進んでいる。母はヨーカ堂ができる前までは、隣町の商店街を利用していた。その隣町にも大型ショッピングモールができると、かつては賑やかだった商店街も客を奪われ今もなお閑散としている。思い出の景色は跡形もなく消え生まれ変わっていく。
ヨーカ堂を父と訪れたのは、あの時一回きりだ。仕事で留守がちだった父との思い出はさほど多くない。だからなのか、いつも思いつきで私を連れ出す父との記憶は鮮明だ。
みなさんのお正月はいかがでしたか。ご馳走続きで胃も疲れ果てているのではないでしょうか。お正月バテをリセットするために、胃に優しいほたてしんじょうのお吸い物をご紹介します。うま味が詰まったほたてすり身の茶巾絞りを吸い物仕立てにしました。美味しく召し上がってください。
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ふわふわほたてしんじょうのお吸い物
【材料 1人分】
材料名 | 分量 | 1 | ほたてすり身 | 60g*作り方は第9回「ほたてすり身」参照 | 2 | 【吸い地】 |
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出汁 | 150cc | |
薄口醤油 | 小さじ1 | |
塩 | 少々 | |
本葛粉 | 3g | |
3 | みつ葉 | 適量 |
4 | ゆずの皮 | 適量 |
5 | 花麩 | 適量 |
【作り方】
ほたてすり身を用意する。すり身をラップに包み茶巾絞りにし、絞り目を輪ゴムでしっかりとめる。600Wの電子レンジで約80秒加熱し、そのまま冷ます。 みつ葉はさっと茹でて冷水に取り、軽く水気を絞る。ゆずの皮を薄くむき細切りにし、花麩は水で戻してから、軽く水気を絞る。 鍋に吸い地の材料を入れ、葛粉が溶けるまで混ぜ中火にかける。とろみがついたら火を止める。 椀に1を盛り付け、3を注ぎ2を添える。