「がんサバイバー・クラブの活動」を経済同友会で紹介しました
掲載日:2017年8月9日 10時00分
「がんサバイバー・クラブの活動」を経済同友会で紹介しました
7月31日、がんサバイバー・クラブは経済同友会の会員向けに活動を紹介しました。会場の日本工業倶楽部(東京丸の内)に集まった参加者は70名。経済同友会の同友クラブメンバーとその関係者が参加しました。
「がんと就労の問題の切実さに気づいた」「がんという病についての理解が深まった」といった感想が寄せられました。また「がんサバイバー・クラブを是非支援したい」という声もいただきました。
がんはグローバルな問題
第Ⅰ部「がんサバイバー・クラブ ~10年後に100万人をめざして~」では、日本対がん協会常務理事の関原健夫が講演をしました。
「年間1,400万人が罹患し、900万人が亡くなっています。がん患者の家族や遺族も含めれば、がんと向き合う人たちはもっとたくさんいます。がんは個人的な問題ではありません。全世界で取り組むべきグローバルな問題です」
と話しました。
また日本のがんサバイバー支援の体制については以下のように話し、寄付や支援の必要性を訴えました。
「他の先進諸国と比較すると、日本のがんサバイバーの支援額は最小規模です。がんサバイバー・クラブは、日本に民間の強力ながんサバイバー支援体制を築くために重要な役割を担っています」
がん医療は急速に進歩していますが、「がんと就労」や「がんと高齢化」など、新たな問題も出てきています。
がんと就労
がんと診断される人の3割は就労年齢(20歳~64歳)です。就労環境の多様化により向き合う事態も様々です。
関原は、39歳で大腸がんと診断された自身の体験も交えながら、以下のように話しました。
「再発や転移の不安など、仕事に集中できないこともありました。がんと診断された人は強い精神的ストレスや孤独感を抱えていますが、一方で仕事も両立しなくてはりません。これからは企業にとってもがんサバイバーの継続雇用が課題になるでしょう」
がんと高齢化
一方で、医療の進歩に伴い平均寿命が延び、その結果として高齢者のがんが増えています。
関原はがんと高齢化についてはこう話します。
「高齢化社会といわれる中で核家族化が進んでいます。一人暮らしの高齢者ががんの治療に向き合うのはとても困難です。また高齢世帯においても、高齢のがんサバイバーを高齢の配偶者や家族が支えるのはとても困難なことです」
がんをめぐる老老介護は珍しくありません。がんサバイバー・クラブは新たな共助・共生社会の構築をサポートしていきたいと思います。
がん検診の意義
第Ⅱ部「がんをめぐる諸問題」では、日本対がん協会会長の垣添忠生が講演をしました。まずはじめにがんとはどういう病かということについて話しました。
「がんは慢性の病です。遺伝子の異常により発生しますが、進展にはとても長い時間がかかります。自分や家族がんと診断されると最初はパニックになってしまうかもしれません。しかし、がんは慢性の病なので、治療方法や自分や家族がどう生きたいかについてじっくり考える時間が十分にあるのです」
垣添は、がんの発生と進行について1枚のスライドを見せました。
図のように、発生したがんは時間の流れとともに進行します。垣添は「大切なのは早期に発見することです」と言います。
「がんのやっかいなところは、発生した時にはなんの症状もないことです。そして症状が出る頃には、しばしば、進行がんで転移しています。しかし『検出可能』な時期があるのです。この時期にがんを見つけることが大切です」
がん検診の最大の目的は「がんになっても早期に発見し、がんで死なない」ことだ、と検診の意義を話しました。
グリーフワーク ~大切な人を亡くした体験から立ち直るために~
垣添はがん専門医でありながら、最愛の配偶者をがんで失っています。
「わずか4ミリで発見したがんから、1年半で妻はこの世を去りました。妻を亡くして最初の3カ月は酒に溺れ、自宅で妻の服や身につけていたものなどを見ると涙があふれました」
その後の半年~1年はなかなか前向きな気持ちになれず、積極的に生きるまでには時間がかかったといいます。垣添は、登山や居合など「新しいことを始めること」と、生前の妻との思い出を執筆したり、妻と出掛けた中禅寺湖をカヌーで下ったりするなど「思い出をもう一度共有すること」を行いました。自分なりのグリーフワーク(悲しみから立ち直るための営み)を重ねた結果、「悲しみをいだいたまま生きる術を身につけた」と語りました。
講演を聞いた参加者からは「家族ががんで介護をしています。実体験が聞けて参考になりました」などの声が寄せられました。
がんサバイバー・クラブの4つのテーマ
がんサバイバー・クラブは4つのテーマで活動しています。
「予防・早期発見」「治りたい」「普通の生活がしたい」「支えたい」です。
今後もこのテーマを軸に、がんサバイバーやその家族(ケアギバー)をサポートしていきたいと思います。日本におけるがんサバイバー支援の基盤を強固にしていくため、是非ご支援をよろしくお願いいたします。(文:大石しおり)