「先生は一度決めたら諦めませんから」
~全国縦断がんサバイバー支援ウォーク随行記~
掲載日:2018年2月7日 10時37分
垣添忠生の全国縦断がんサバイバー支援ウォークに同行して~スタッフ便り~
2月5日、この冬最大の寒波が福岡を襲った。私の前に沿道を黙々と歩く人がいる。背負われた重そうなバックには、「全国縦断がんサバイバー支援ウォーク」の文字が入った小旗が差され、吹雪でパタパタと勢いよく翻っていた。
その人は日本対がん協会会長の垣添忠生。元国立がんセンター総長だ。
全国の病院を歩いて回るなどと誰が考えるであろう。その距離3,500km、延べで90日にも及ぶ。しかも76歳の挑戦だという。その計画を聞いた時は誰しもが自分の耳を疑い、途中でもし何かあったら・・・と心配した。
しかし秘書の森田幸子はこう言い放った。「先生は一度決めたら諦めませんから」。
世の中に理想や希望を話す人はたくさんいる。しかし有言実行できる人は少ない。よって、全国を自分の足で歩き、身をもって「がんサバイバー支援」を訴える、その行為に人は魅せられる。全国がんセンター協議会加盟の32病院を訪問する予定だ。各院長と話すことに加え、サバイバーとの交流を大切にしたいと言う。
垣添はがんの専門医として数多くの患者を診てきた。自分自身が大腸がんと腎臓がんを患い、約10年前には妻を肺がんで亡くしただけに想いはこのうえなく強い。
夜明け前のスタート
初日の2月5日夜明け前、博多のホテルから2時間歩き九州がんセンターに到着した。藤也寸志(とう やすし)院長、日本医師会の横倉義武会長らと懇談し、地元のサバイバーとの交流の時間を持つことができた。会場は終始やさしいムードに包まれ、垣添は参加者の自己紹介に笑顔で耳を傾けた。
10時半過ぎに九州がんセンターを出発。全国ウォークの始まりだ。応援に駆けつけたサバイバーによるお手製の応援横断幕も用意され、日本対がん協会県支部の応援が垣添を勇気付けた。
私は2時間半の道のりを一緒に歩かせてもらった。同行してくれたリレー・フォー・ライフ福岡のメンバーの気持ちが嬉しかった。垣添は、四国お遍路をした時から愛着のあるリュックなど7つ道具に加え、内ポケットには今は亡き妻の写真を偲ばせていた。時折の吹雪を物ともせず足取りは軽い。168cmの後ろ姿がひと回り大きく見えた。「ぜひご無事で」。心の中でそうつぶやいた。(文:岡本宏之)