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【第2回まとめレポート】
キュアから、キュアもケアも、へ

掲載日:2018年3月9日 16時45分

 4月に喜寿を迎える日本対がん協会会長の垣添忠生が、福岡市から札幌市まで、約3500キロの道のりをできるだけ歩く「全国縦断 がんサバイバー支援ウォーク」は、このほど、第2回を終えました。広島県から愛知県まで、東へ。全国がんセンター協議会に加盟している病院を訪問し、病院スタッフやサバイバーの声に耳を傾けています。道中も多くの方々と交流しています。  日々の様子は特設サイトの一言ブログやインスタグラムにアップしてきましたが、伝えきれなかった大切な話もたくさんあります。  垣添のレポートを改めてお届けします。

がん医療の原点に立ち返ろう!

 厚生労働省が指定する「がん診療連携拠点病院」は全国で400あります。どこも患者や家族に対する支援センターを設けることが義務付けられています。  しかし、現実には、支援センターの活動が活発で病院の運営に患者や家族の声を生かしている病院から、支援センターがどこにあるかもよくわからない病院まで、温度差があります。  2月5日からのウォークで、九州から愛知県まで12の病院を回ってきました。  院内の患者会が活発なところは、意見交換会でも、私に遠慮することなく、治療費の問題、患者会育成、検診の啓発の重要性、医師の過重労働に対する配慮など、さまざまな要望や指摘が出てきます。そうした声を直接受け止めるために歩いているので、大歓迎です。こうした病院では、患者が積極的に活動できる雰囲気をつくっているのでしょう。  がんの学会は、大きく3つあります。日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会です。どの学会でも近年、患者を含めたシンポジウムやワークショップが開かれています。患者の視点を取り入れるためです。以前は「キュア(治療)」に手いっぱいで、そこまでの余裕はありませんでした。でも、がん患者の5年生存率が6割を超える時代を迎えて、「キュア」から「ケア」へ、いや、「キュアもケアも」に変わりつつあります。がん患者や家族と共に歩む学会、というふうに明らかに視点が変わってきました。  がん医療は、患者(サバイバー)と家族(ケアギバー)のためのもの。2人に1人ががんになる時代です。患者の叡智は、がん医療の進歩に欠かせないでしょう。原点に立ち返る重要性を、改めて痛感します。全国の病院は是非とも、原点を忘れずに対応を進めていただきたいと思います。

記者たちに聞かれること

 どこに行っても、ありがたいことに取材を受けています。大阪ではNHKのニュースで流れたので、ウォーク中に、「テレビ見ました。がんばってください」と車から声をかけられることもありました。  どの記者も必ず聞くのが「なぜ歩いているか?」です。  ――2人に1人ががんになる時代なのに、がんと分かるとサバイバーが孤立感を感じてしまう。ときに差別されて、仕事を失う。そういうことがないように、患者や家族を支援する「がんサバイバー・クラブ」を立ち上げて、会員を募り、寄付で活動している。会員や寄付を増やすことと同時に、がんに対する理解を深め、サバイバー支援を訴えるために歩いている。遠からずサバイバーは1000万人になるだろう。国民皆保険を守るためにも、禁煙などの予防と検診による早期発見が重要。早く見つかればすぐに社会復帰できる。  そんな日ごろの考えを述べると、みなさん、納得してくれます。

左足首は腫れたけれど……

 ウォークでは、日本対がん協会の各県の支部や地元のリレー・フォー・ライフのスタッフのみなさんと歩くこともありました。ざっくばらんに話しながら歩くと、1人のときよりも楽しいし、楽です。  それでも、第2回ウォークの途中で左足首が痛み、腫れてきました。足底筋群(足の裏にある筋肉の総称)がくたびれたようです。靴底を見ても、左の外側の減り方が激しいので、私の歩き方にも問題があるのでしょう。  テーピングをしたり鎮痛薬を塗ったり、鎮痛剤を2錠飲んだりしていました。ゆっくり歩き、交通機関のお世話になる距離を延ばしました。北海道まで先は長いので、ここで無理はできません。

タクシーの運転手さんからの手応え

 タクシーの車内は、ゆっくり話すのに向いています。  東京へ帰ってから、同世代の運転手さんと話し込むことが2回ありました。乗車の際にリュックやのぼりをトランクに入れるので、「何をしているのですか?」と聞かれるのです。記者たちに話すような内容を説明します。  1人の運転手さんは、4000円の料金のうち1000円を寄付してくださいました。もう1人は個人タクシーの運転手さんで、「私はずっと自分のために生きてきました。こういう社会貢献があるのですね」と感激して、約6000円の料金を無料にしてくださいました。私が強く払おうとしても、どうしても受け取ってくれませんでした。  お金の話をしたいのではありません。彼らの気持ちがとてもうれしいのです。タクシーの運転手さんが特殊なわけではないでしょう。車内でじっくり話せるから、理解してもらえるのです。一般の人にもウォークの意義、ひいてはサバイバー支援の大切さが伝わる。そんな手応えを感じています。

季節とともに

 病院訪問の約束が入っていない日は、のんびりと旅の気分で歩いています。 今年は寒波が厳しかったからでしょう。梅が咲くのが遅いようです。第1回のウォークで回った九州では、まだ咲いていませんでした。3月に入って大阪を訪ねたときには、大阪城の旧掘割で白梅がきれいに咲いていました。  滋賀県を歩いていたときには、遠くに見える近江富士がほんの少しずつ近づいてきて(徒歩だからなかなか縮まりません)、ふと気付くと横にたたずんでおり、さらに後方へ消えていく。あたりまえの流れではありますが、歩くからこそ楽しめる山の百景です。山登りが好きな私には、たまりません。  季節や風景の移ろいを実感できるのも、ウォークならではの贅沢でしょう。  おかげさまで、インスタグラムのフォロワーの方もどんどん増えています。ご支援ご声援、どうもありがとうございます。  第3回ウォークは3月9日から。東海道を東へ向かい、まずは静岡県立静岡がんセンターを目指します。お世話になっている整体師の先生から「イスに座ってテニスの硬球を踏むと足底筋群のストレッチになる」と教えていただき、さっそく買って試してみました。  引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。  このページでは、同行していた方々にご提供いただいたお写真も掲載させていただきました。個々のお名前は省略させていただきます。ご協力どうもありがとうございました。
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