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【第3回まとめレポート】サプライズがあるからこそ、歩き続けられる ~がんサバイバー支援ウォーク、静岡・神奈川を巡って~

掲載日:2018年3月19日 11時30分

 日本対がん協会会長の垣添忠生の「全国縦断 がんサバイバー支援ウォーク」は、このほど、第3回を終えました。静岡県から神奈川県まで。これまでの2回と比べるとコンパクトで、5日間で2つの病院を訪問する日程でした。それでも、さまざまな出会いやサプライズがありました。それが、歩き続ける後押しにもなっています。  日々の様子は特設サイトの一言ブログインスタグラムにアップしてきましたが、伝えきれなかった大切な話もたくさんあります。  垣添のレポートを改めてお届けします。
 3月12日、静岡県立がんセンターで。充実の訪問となった。

緑色の波に迎えられて

 あっと驚きました。  目の前には、緑色の波。  ウォーク3日目の3月12日、静岡県立静岡がんセンターを訪れたあとに、目と鼻の先にある、テルモの医療電子機器の開発製造拠点、テルモMEセンターに寄ったときのことです。  50人以上でしょうか。出迎えてくださった方たちが「がんサバイバーを支援しよう」と書かれた緑色のTシャツを着ています。横断幕も緑色で、やはり「がんサバイバーを支援しよう」の文字。手には緑色の小旗。ウォークの7つ道具のひとつ、私ののぼりと同じのぼりが2本、目に入ります。  この日は朝から、テルモの社員の方たちと一緒に歩いていて、私を迎えるにあたり、いろいろご準備いただいたことは聞いていました。しかし、これほどまでとは思いませんでした。  一言ブログでも折に触れて書いていますが、テルモには日頃から大変お世話になっています。私は、国立がんセンターの現職時代には企業とのお付き合いに一線を引いていましたが、退職後にテルモの社外取締役を務めました。  企業の現場では、たとえば海外進出など、決断を迫られる場面がしばしばあります。日本郵政公社の総裁だった生田正治さんも社外取締役でいらして、一通り意見を聞いたあとで、別の観点を提示されたりしていました。  経営のプロではない私には、繰り広げられる議論が、とても勉強になりました。このときの経験は、今につながっています。  テルモは、もともと健康経営に熱心な企業です。抗がん剤の曝露(医療者が抗がん剤に触れたり吸い込んだりすること)による健康被害対策にも力を注いでいて、対応した医療機器も開発しています。患者ファーストと同時に、医療スタッフを守るという視点も重要です。  テルモMEセンターで。感激の緑!

桜えびのかき揚げ2枚!

薩埵峠からの風景。テレビ局の定点カメラも設置されている。

 ウォークでは、さまざまなサプライズがあります。  3日目の3月11日は、東日本大震災から7年が経過した日です。私も震災から2カ月後に、対がん協会の活動で被災地を訪れるなどしており、考え方もいろいろ変わりました。復興の行く末も気にかかります。  この日、私は、静岡県のリレー・フォー・ライフの方たちと歩きました。一言ブログでお伝えしたように、国道を離れて、薩埵峠(さったとうげ)に回りました。最初は曇っていたのですが、私たちが登るにつれて、西から晴れてきました。天候も味方してくれているようです。  お昼は由比の名物、桜えびのかき揚げ。同行していただいた静岡RFLの杉山さんご夫婦にごちそうしようと、かき揚げ2枚にお刺身のついた定食を注文したら、私がトイレに立っている間にお支払いいただきました。何と言っても受け取ってくださりません。帰京後に老舗の和菓子屋さん「空也」のもなかをお送りしましたが、ご夫婦のお気遣いが、うれしいサプライズでした。

桜えびのかき揚げ。本当にうまかった!

喪失体験を共有して

 午後は、ご夫婦と入れ替わりで、浜松からいらした藤田伸之さんと歩きました。  藤田さんは59歳。髪は真っ白です。息子さんは、上咽頭がんで、高校3年の10月に17歳で旅立っています。ご健在なら、今年28歳。  「何年経っても、息子の年を数えてしまうんです」  息子さんががんになったのは中学3年のとき。高校ではサッカー部に入り、周囲に告げないまま、高校生活と治療を両立させていました。 命日には、今も友人や後輩たちが集まってくれるそうです。そのうちの1人は今度結婚されるとか。そんな話を、まるで息子さんの成長を愛おしむように語っておられました。

富士川で見えた小さな虹。川の左端は魚が上るための魚道。

 私も妻を2007年の大晦日に亡くしています。藤田さんのお気持ちはよくわかります。見かけは元気でも、心の深いところでは、いつまで経っても悲しみは消えないものです。  藤田さんには話しませんでしたが、スイセンの花を見るたびに思い出す光景があります。ひとつは、ベルギー西北部のブルージュにある世界遺産のベギン会修道院。庭一面にスイセンが咲き乱れていました。もう一つは、伊豆半島の先端、下田の爪木崎。野生のスイセンの大群落が見られます。スイセンが岬を白く染めるさまはハッと息を飲む美しさで、妻と何度も訪れました。 インスタグラムでは、自撮りした、藤田さんと男2人のアップを上げました。ド迫力(!?)の写真の裏には、喪失体験の共有があったのです。 背景の富士川は、富士山の雪解け水で、水量が大幅に増えています。水煙が上がり、小さな虹がかかっていました。

落葉がダメなら桜はどうする?

 最終日、一言ブログでは植木会社にお勤めの方と歩いた話をお伝えしました。割愛した話に、街路樹のことがあります。  紅葉する木は、人々の目を楽しませてくれます。当然のことながら、紅葉が終われば、落葉します。それに対して、行政に文句を言う住民がいるそうです。すると行政から、植木会社に「葉が落ちる木を植えないでください」という要望が来るそうです。 それなら桜はどうするのでしょう? 人間は身勝手なものだなあ、と思いました。  この日はもうひとり、サバイバーの女性と歩きました。「治療中も歩くほうが気分も前向きになっていい」といった話をしました。ウォークの最後、相鉄線二俣川駅での別れ際にサプライズがありました。彼女が、平塚神社のお守りをくださったのです。  ウォークを通じて浮かび上がるのは、サバイバーの声に耳を傾けることの重要性です。私はがんの専門家なのだから聞かなくてもわかるのでは、と考える方がいらっしゃるとすれば、それは違います。気づかされること、教えられることはたくさんあります。  第4回ウォークは3月31日から。北陸を歩きます。いただいたお守りも持っていきます。各地で桜が満開になるころでしょう。ご支援ご声援に感謝しています。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。 静岡がんセンターのスピリットは「心」。富士山の右手に雲が2つ、という絵柄だ。
 このページでは、同行していた方々にご提供いただいたお写真も掲載させていただきました。個々のお名前は省略させていただきます。ご協力どうもありがとうございました。
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