がんを乗り越える人はたくさんいる
いくらマラソンブームとはいえ、100キロマラソンに挑戦する人は、めったにいない。ましてや、がんサバイバーで、がんになる前よりもよい記録を出すとなれば……。それが、大久保淳一さん(53)だ。 大久保さんは42歳で精巣腫瘍のステージ3と診断され、手術や抗がん剤治療を受けた。下半身のみの麻酔だった手術中は、睾丸を1つ摘出される際などに電気メスで自分の体が焼かれる匂いもかいだという。 大久保さんは復職し、マラソンにも復帰した。そして、あるときから「病気で失ったものより得たもののほうがはるかに大きい」と感じるようになった。 そんな大久保さんが立ち上げたのが、NPO法人「5years」だ。サイトには、4400人以上(2018年3月時点)のサバイバーが登録(無料)して、交流し、互いに支え合っている。多くのサバイバーのプロフィール情報も載っている。大久保さんは登録者10万人を目指す。大勢のサバイバーが集まれば、自分と同じ経験を先にした人と出会えるだろうし、また、「がんを乗り越える人がたくさんいる」と示すことが、希望のメッセージになると確信しているからだ。 垣添との対談では、自身の心の揺れから「5years」が掲げる理想まで、存分に語っていただきました。続きはこちらで。【大久保淳一(おおくぼ・じゅんいち)】1964年、長野県生まれ。名古屋大学大学院(工学)修了。石油会社に6年勤務後、1999年、シカゴ大学経営大学院MBA取得。1999年~2014年、ゴールドマン・サックス証券に在籍。2007年、精巣腫瘍のステージ3と診断される。治療を経て、翌年、復職。2015年、「5years」を立ち上げる。命名には、「病気をしても人生にチャンスがある。わたしたちの未来は、いつだって輝かしい」というメッセージを込めていて、がん患者や家族の交流サイトを運営している。著書に『いのちのスタートライン』(講談社)。