垣添忠生の全国縦断がんサバイバー支援ウォーク 一言ブログ 4月10日
東京から新幹線で金沢方面へ向かうときは左側、帰るときは右側の座席を取ります。北アルプスの山々、中でも剣岳を見たいからです。
剣岳は標高2999メートル。「岩と雪の殿堂」と言われるように、非常に険しく、カニのヨコバイ、カニのタテバイ、といった難所があります。長く前人未踏でした。明治末期、旧陸軍の陸地測量部が“初登頂”に成功します。しかし、山頂で彼らが見たのは、修験者が使う錫杖や焚火の跡でした。奈良時代ごろのものらしいです。
新田次郎の小説『剣岳 点の記』が2009年に映画化されたので、ご存知の方もいらっしゃるでしょう。
私にとって、この剣岳は、思い出深い山です。
2007年の大みそかに妻が亡くなって2カ月後ぐらい経ったころのこと。銀座のなじみの老舗割烹のカウンターでひとり、鬱屈して酒を飲んでいたら、山の話が聞こえてきました。「そばに行っていいですか?」とお断りして話の輪に加わりました。
そこで出会ったのが、Wさんです。若いころに仲間を剣岳で失っていました。毎年9月に、慰霊の気持ちも込めて剣岳に登っているそうです。1年半後の9月に私も同行させていただくことになりました。
それから、本格的に体を鍛えるようになり、4人のパーティーで、無事に山頂に立てました。その後も1回登っています。1人では到底無理です。いわば、私が悲しみから立ち上がる大きなきっかけとなった山なのです。
今日は快晴のもと、そんな剣岳を見ながら、ゆっくり歩きました。春霞に包まれていましたが、屹立する姿を堪能できました。
実は今日は、77歳の誕生日。喜寿です。感慨や抱負? 何もありません。年を1つとっただけ。まだまだ通過点に過ぎないのです。
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