垣添忠生の全国縦断がんサバイバー支援ウォーク 一言ブログ 5月16日
今日は、いよいよ首都東京です。
都立駒込病院、国立がん研究センター、がん研有明病院の3カ所に加えて、国会前でもアピールするという、今回のウォークきっての濃密な1日でした。
尿閉はまだ全快せず、導尿用のカテーテルを入れたままです。このため、今日も移動は車。各訪問先の少し前から歩くパターンでした。
それぞれの交流会で、状況を説明しながら、「インチキして」「お目こぼしいただいて」などとお断りすると、ときに笑いながら、みなさん暖かく受け入れてくださいました。ありがとうございます。
なお、日本対がん協会のスタッフたちが、しっかりウォークをしました!
●言い続けて、言い続けて十数年 ~都立駒込病院~
都立駒込病院では、鳶巣(とびす)賢一院長をはじめ、多くの方々にお出迎えいただきました。
病院の理念は「医療を通して人がその人らしく生き抜くことを支援する」。鳶巣院長が「サバイバーシップそのものです。体の問題、心の問題、お金の問題。すべてに私たちで精いっぱいの対応ができないか。これから先はそこに高齢化が加わってきます。それらをカバーできる組織を作るしかない」とおっしゃいましたが、まさにその通りです。
駒込病院では、2017年3月、「患者支援センター」を「患者サポートセンター」に組織変更し、院内の目立つ場所に移して、活動を拡大しました。消化器外科医の出江(いずみ)洋介医師がセンター長です。
出江先生によると、センターは病院の理念を実現するためのエンジン。設置場所を、病院の玄関入ってすぐ、会計の隣に移したら、それまでは月に数十件だった利用件数が、一気に1300件に伸びたそうです。
社会福祉士、看護師、臨床心理士などスタッフは総勢34人。ハローワークの職員も週に1回来て相談を受けています。「会社をやめないように」という取り組みに力を入れていくそうです。的を射たアドバイスだと思います。
ピアサポートも行っているそうで、手厚さを感じました。
車座になっての交流会では、駒込病院にかかわっている患者会、遺族会のみなさんとお話しできました。
ピアサポートをされているというNPO法人「がん患者団体支援機構」理事の女性が、「駒込病院の院内での活動はうまくいっているが、地元の県では、病院内に患者サロンを設置することも難しい(場所を提供してもらえない)」という現実をお話しされました。議員を通して訴えかけてもなかなか開催できない、とのことです。
私は「新しい活動を始めるのは、常に困難を伴います。とにかく声を上げることです」と申し上げました。
私も、がんセンターの院長・総長を務めた15年間、がん対策は法律に根差すべきだと訴えましたが、全然取り合ってもらえませんでした。
島根県のカメラマンの方が抗がん剤治療の地元と東京での格差に気づいて、奥様と2人でがん治療改善を求める運動をはじめ、やがて全国に広がりました。最終的には、民主党の山本孝史さんが国会でご自身のがんについて発言されたことで、ついに「がん対策基本法」が成立したのです。
「言い続けて、言い続けて十数年です。国民が声を上げ続けることが世の中を動かします」
会場には、山本孝史さんの奥様の山本ゆきさんもいらっしゃいました。ゆきさんは2年ほど前に、孝史さんと同じ胸腺がんの患者会を立ち上げたそうです。
「希少がんで、声を上げていかないと、なかなか社会や医療者の理解を得られません」
会員は全国で130人ぐらい。治療法が確立されていないので、治療や生活の情報交換をされているそうです。
37年前から悪性リンパ腫を4回経験された「がんカフェ ぷらな」の方からは、月に1回、お寺の一部屋で、がん患者や家族、遺族の方まで対象にお話の会を開いている、というご紹介がありました。遺族の悲しみは医療の外側にあります。大変いい活動をされていると思いました。
ほかにも、患者がヨーロッパ最高峰のモンブランに登ったことで知られる、がん患者と家族「どんぐりの会」(遺族の会として「青空の会」も)、院内院外で活動されているNPO法人「血液患者コミュニティももの木」、駒込病院血液内科の患者と家族でつくる「つつじの会」などの方から気持ちのこもったお話を伺えました。
●がん対策基本法は患者の尊厳法 ~国会前~
国会議事堂と道路を挟んだ衆議院議員会館の前に、駒込病院からウォークにご同行いただいた「どんぐりの会・青空の会」の旗と、「がんサバイバーを支援しよう」の横断幕を掲げました。外科医で在宅の緩和ケアにも携わっている中島克仁衆議院議員(民進党出身で今は無所属)が、駆けつけてくださいました。
中島議員からは「これからも超党派で、がん対策のあり方、サバイバーのみなさんのご支援を一歩でも二歩でも進めていきます」と力強いお言葉をいただきました。
山本ゆきさんも引き続きお越しいただき、こんなご挨拶をいただきました。
「(2016年に)がん対策基本法が改正されて、希少がんや難治性がんにも光が当たるようになりました。山本孝史が議員のみなさんに託した思いは、がん対策基本法は患者の尊厳法ということです」
2006年、がん対策基本法が国会で廃案になりそうになったときに、流れを一気に変えたのが、山本孝史さんのご発言でした。深く感謝を申し上げています。今日は、ゆきさんとお目にかかれると思っていなかったので、うれしく、また決意を新たにする再会でした。
●病院なのに病院でない空間 ~国立がん研究センター~
続いて訪れた国立がん研究センターは、言うまでもなく、私の古巣です。中釜斉理事長、西田俊朗院長をはじめ、多くのみなさんに歓迎していただきました。私の飲み友達や、中高と過ごした桐朋の同級生の顔も見えます。
西田院長は、「国立がん研究センターも、がん医療のみならず、がんサバイバー支援に力を入れています」とおっしゃっていました。ご自身は、就労、仕事の継続に取り組んでいらっしゃるそうです。
さらに全人的なケアを「患者サポート研究開発センター」で展開し、効果があれば全国に広げていきたいという構想をお持ちです。ただ、保険適用外なので、経済基盤が不安定で、クラウドファンディングを始めたそうです。
「病院で完結するのではなく、社会全体で患者さんを支えていく。逆に社会も患者さんに支えられる。そういう社会を築きたいという志を持っています」
すばらしい構想です。ここでも、多くの人が声を上げていくことで世の中は変わるはずです。
同センターは病院棟8階にあります。2016年8月に、センター長で、化学療法の専門家でもある朴成和先生によると、「病院に来ているのに病院でない空間」というコンセプトだそうです。窓を大きく取り、景色がよく見えます。鏡を作ることで、空間を広く感じられるようにしています。
ここでは、看護相談、薬剤師外来、栄養相談、緩和医療相談などのほか、リンパ浮腫、抗がん剤治療、すい臓がん・胆道がんなどの患者教室も開いています。
朴先生によると、大切なのは「半歩先」を行くこと。十歩前だと、視察に来られた方も「自分のところでは無理」と判断してしまいます。「患者の待合室も、テーブルを置くだけで全然違うんですよ」とも。大切な視点です。
クラウドファンディングなどで、私も応援していきたいと思います。
●ご自身の体験を伝えてください ~がん研有明病院~
最後は、がん研有明病院です。
ご主人がすい臓がんで、残念ながら最近再発されてしまったという方が、
「5大がんの6番目にすい臓がんも入れてもらえないのか。すい臓がんが仲間外れになっているみたいな気がします」
と訴えられました。
すい臓がんは、厳しいがんです。すい臓がんの患者さんは増えています。私は「5大がんは象徴としての言い方です。みなさんが声を上げ続けておられると変わります。研究を応援する意味でも、ありがたいです」と申し上げました。
山口院長も、「すい臓がんは重要な病気です。ここ5年ぐらいの間に、いい抗がん剤が出てきました。今も新しい薬がどんどん開発されています。決して希望を失わないでください。必ず克服される日が来ます」とフォローされました。私も同感です。
お母さんを7年前にスキルス胃がんで亡くされた女性は、それをきっかけに検診を受けたら4センチの胃がんが見つかったそうです。お父さんと参加されていました。
「生き残った若い元がん患者が、みなさんにできることは何でしょうか?」
こう問いかけられました。私は、
「ご自身の体験をみなさんに伝えてください。がんが治って元気になった方がたくさんいることが伝われば、がん=死というイメージが変わっていきます」 と申し上げました。
山口院長からは変化球の質問も出ました。
「先生は前から歩いていたのですか?」
お遍路をしているときにさまざまなアイデアが湧いたこと、日ごろから腹筋やスクワット、居合道などで体を鍛えていること、趣味のカヌーのことまでお話ししました。そんな“サイドストーリー”も含めて、充実した訪問となりました。
一言ブログなのに、長くなってしまいましたね。お目こぼしください!
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