日本対がん協会のがんサバイバー・クラブは、1月30日、第8回がんサバイバーカフェを開催しました。テーマは、「経済的な負担を減らす『がん患者のための障害年金』」。東京・銀座の日本対がん協会の会議室に、15名の参加者が集まりました。講師は、がん患者の障害年金申請に詳しい、山岸社労士事務所代表の社会保険労務士の山岸玲子先生。障害年金は社会保険(国がやっている保険)の1つです。山岸先生に、「障害年金の基本」から「申請時のポイント」まで、詳しく学びました。
がんで障害年金はもらえるの?
山岸先生はまず、「障害年金とは、社会保険の1つです」と強調しました。
公的年金には、①高齢になったときの「老齢年金」、②病気や怪我で生活に支障があるときの「障害年金」、③一家の大黒柱が亡くなったときの「遺族年金」の3つがあり、何かあったときのために保険料を納めて、いざというときに給付を受ける仕組みは民間保険と同様です。
受給が決まり、精神的・経済的負担の軽減から、表情が明るくなる患者さんを目の当たりにしてきた山岸先生は「要件を満たしたら、ぜひ申請して欲しい」と言います。
しかし、「障害」という言葉から負のイメージを感じて申請しない方が少なくありません。
また、医療従事者の間でも、がんで給付されることがまだ十分知られていません。このため、患者や家族に情報が行き届かないという課題があります。
山岸先生は実際に携わった、がんで障害年金が支給されたケースを紹介しました。
・小児がん治療後の視野障害
・膀胱がんで人工膀胱造設
・肺がんで在宅酸素療法施行
・脳腫瘍摘出後の高次脳機能障害
・膵がん治療中の副作用による労働制限
・胃がん摘出手術後の体力低下、骨転移
外部障害がなくても受給できるケースはあります。
では、障害年金制度を利用したいときは、どうすればよいのでしょうか。
受給するための要件は3つです。
① 初診日を証明すること
② 保険料納付要件を満たしていること
③ 障害認定日に障害の等級に該当していること
それぞれの要件について詳しい解説が行われ、次いで、「請求するタイミング」「請求準備の手順」「必要書類」「給付額」「手続きをする窓口」についてと、障害年金に関する基本知識が説明されました。
一番大事なものは診断書
「当然ですが、診断書が一番大事になります」
障害年金受給のために主治医に書いてもらう診断書には、所定の書式があります。
山岸先生は、日本年金機構のホームページでも公開されている「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 第16節 悪性新生物による障害」と照らし合わせながら、丁寧に解説しました。
「障害認定基準は、あくまでも目安です。自分や家族のつらい症状、大変な状態を診断書にきちんと落とし込んでもらうことが、非常に大切です。そのため、主治医に診断書を依頼するときは、症状をメモにまとめて一緒にお渡しするなど、日常生活の様子をお伝えするようにしましょう。ソーシャルワーカーさんがサポートしてくれる医療機関もあるので、がん相談室に相談してみるのも良いでしょう」とアドバイスがありました。
味方になってくれる社労士を見つけて、自分らしい生活を
最後に、社労士に依頼をするメリット・デメリットを紹介し、自分の味方になってくれる社労士の見つけ方について言及しました。
「ホームページでいいなと思ったら、電話をしてみてください」
山岸先生がこう語る理由は、文章よりも、声や話し方を聞いた方が、相手の社労士が自分に合うか分かりやすいからだと言います。
山岸先生はこのように締めくくりました。
「障害年金の受給は、その方が『障害者』ということではありません。その方がどんな人生を歩み、何を大切に思って生きてきたか。それによって、その方が障害年金を受給する意味は変わります。障害年金を受給することで心の負担がなくなる方、精神的な苦痛が少しでも軽減される方がいらっしゃるというのを私は感じています。ご自分のご家族やご友人に迷っている方がいらっしゃったら、こういう制度があることを伝えていただけたらと思います。」
講演後は山岸先生に参加者から多くの質問が寄せられ、疑問点の解決や、より深い知識の習得に結びつく有意義な時間になりました。
主なQ&Aをまとめました。
※障害年金は個人によって状況が異なるため、手続きの際は年金事務所や市区町村役場の担当窓口、社労士にご相談ください。