話しかけてくれたあなたに感謝
5月11日に東京医科歯科大学で開かれた「リレー・フォー・ライフ・ジャパン東京御茶ノ水」の会場でのことです。
日が暮れてきて、都会のネオンを背景に、ほぼ等間隔でずらりと並んだルミナリエの暖色の灯がポッ、ポッと浮かびます。心がやすらぎ、ほんの少し幻想的な風景。
「ばあちゃん、空からの景色ってどんな~?」
「祈りが届きますように」
「あの時、話しかけてくれたあなたに感謝」
ほとんどのルミナリエには、がんで旅立った人との思い出やさまざまな感謝の言葉などが綴られています。絵が描かれているものもあります。幼い子どもが描いたとおぼしき顔の絵に和みます。
つくった人たちの気持ちを想像しながら歩いていて、あるルミナリエに引き付けられました。
「頑張らないを当たり前に 本人も! そして家族も!」
作者名でしょうか、「まるっちょ」とあります。まるっちょさんがどんな人で、どんな状況なのかは、ルミナリエからはわかりません。
がんと向き合わなくたっていい
いいなあ。これだよなあ。
「すでに頑張っているのだから“頑張れ”と励ますのは禁物」という意味だけではありません。「頑張る」「前を向く」「成し遂げる」などに無条件にプラスの価値観を置くことはないのではないか。サバイバーも家族も、それぞれのスタンスで、がんと向き合えばいい。いや、向き合わなくたっていい。そんなふうに思うのです。
がんと就労をめぐる話でも、職場復帰が当然の目標になれば、働くことに積極的になれない人には、かえってプレッシャーになるでしょう。一億総活躍社会、女性登用の議論などからも同じ匂いを感じます。
金子みすゞが「私と小鳥と鈴と」で「みんなちがって、みんないい。」と詠んだように、それぞれの人が歩みたい道を気兼ねなく進める。そうなれば、誰もが居心地のよい社会が実現するのではないでしょうか。ダイバーシティとか難しい言葉を使わなくても。
リレーの会場には何も調べずに行ったのですが、「頑張らないを当たり前に」は御茶ノ水の実行委員会のテーマでした。それを知って、うれしくなりました。
(日本対がん協会・中村智志)
わかりにくいけれど、上から見ると「HOPE」になる